
2019年3月下旬に行われた学部の卒業式に、メキシコはユカタン地域の民族衣装であるTerno(テルノ)を着て出席しました、まそん (máscara-sonrisa)です。
今回の投稿は、Twitter上での学部の卒業式に関する呟き(主に、卒業式でユカタンの民族衣装を着ることになった経緯や、この行動に込めた想い&意味合いについて)の内容を、加筆修正した上でまとめて一つの記事にしたものとなります。
卒業式で着た民族衣装・テルノと当日身につけた装飾品に関する詳しい解説や、ユカタンの民俗服であるHuipil(ウイピル)等の説明&紹介を行なっている記事として、以下の2つも書いております。興味のある方はぜひ併せてご覧ください。


卒業式で民族衣装を着ることになった経緯
流れとしては、
↓
ユカタンを旅した時に、卒業式で同地域の民族衣装・テルノを着ることを決断
↓
民族衣装及び装飾品の購入、卒業式当日のための準備、「卒業式で民族衣装を着ること」の意味を改めてじっくり考える
↓
卒業式当日
といった感じ。
まず、「学部の卒業式に民族衣装を着て出席すること」に密かに憧れるようになったのは、学部2、3年生の頃から。
特定の地域(の言語)に関する研究をしている方が、その地域の民族衣装を着て学部の卒業式に出席されていた様子をTwitterで拝見したり、ある年の3月にたまたま東京外大に行くことがあって、(しかもその日が東京外大の卒業式の日で、)そこでも民族衣装で式に出席する人を見かけたりした、というのがきっかけでした。
しかしながら、それまでは特に自分に縁やゆかり、ルーツのある地域だったり、そういった地域の民族衣装だったりというのは無かったため、ずっと「憧れ」である状態が続いていて、「学部の卒業式は袴かなぁ~?」なんてぼんやり思っていました。
そんな中、転機が訪れたのはメキシコ留学中のこと。

メキシコ南東部に位置するユカタン州を旅した際、ユカタンの民族舞踊(Jarana Yucateca/ハラナ・ユカテカ)のショーであるVaquería(バケリア)を見て、その地域の踊りと、そこでダンサーの女性たちが着ていた民族衣装であるTerno(テルノ)に一目惚れしました。
バケリアを見た次の日もユカタンに滞在していたのですが、街を歩いて色々なユカタンの文化を目にし、たくさん現地の人と話したりして、またユカタンの民俗服及び民族衣装をたくさん見かける機会があって(&見る度にときめいて)、そこで「ああ、学部の卒業式は、ユカタンの民族衣装を着よう。」と決めました。

ユカタン滞在から(留学中にずっと住んでいた)メキシコシティへ戻り、数ヶ月間ほどまた語学学校に通ったりメキシコ民族舞踊のクラスに参加したりしつつ、民族衣装や装飾品購入のプラン(何を買わなければいけないか?予算はどれくらい必要?購入に必要な滞在日数はどれくらい?といった計画)を色々と立てていました。
そして、初めてユカタン州を訪れた時から6ヶ月後に再び州都メリダを訪れ、卒業式に必要なものを無事全て購入しました。(どんなものを買ったかについてや購入に行った時の小話なんかは、テルノに関して詳しく書いた記事↓の方に書いています。)

メキシコ留学から帰ってきた後は、購入した衣装の直し(少しサイズが大きかったので)を親戚にお願いしてやってもらったり、また卒業式まで一ヶ月を切った後は当日の段取りについて考えたり、メイクや髪型の確認(リハーサル)をしたり、「卒業式当日に、学部の建物の前で踊りたい!」と思っていたユカタンの民族舞踊・Jarana Yucateca(ハラナ・ユカテカ)の練習を行ったりしていました。
(ユカタンの踊りの練習や振り付けの習得は、メキシコ留学から帰ってきた直後からずーっとやっていました。その理由は、1つは卒業式の日に踊るため、もう1つは何時ユカタンに戻ってハラナ・ユカテカの上級レベルの舞踊クラスを受講しても大丈夫なようにするため。)
(↓卒業式当日、学部の建物前で踊った時の様子)
El lunes pasado me gradué de la facultad de universidad donde estudié por 5 años.
Cuando asistí a la ceremonia de graduación, me puse el Terno, traje de gala de Yucatán, México.
El mismo día, bailé danzas de Jarana Yucateca que es el nombre de la danza folklórica de Yucatán. pic.twitter.com/KTKgcbSpcD
— máscara-sonrisa (@mxtwkiia) 2019年3月31日
また、学部の卒業式で民族衣装を着ると決めてから式を迎えるその日まで、「式典や記念行事に民族衣装を着て出席すること」の責任や重みみたいなものに関しても、少しずつ考えるようになりました。
近年、文化の盗用*に関する問題もしばしば話題になるようになり、私自身もこの問題には強い関心を抱いています。それ故に、特定の地域の歴史や文化、暮らしといった様々な要素の(背景を経た)上で存在している民族衣装を、その地域にルーツも持たず縁もない私が学部の卒業式で着るということについては、ちゃんと考えた上で(着る理由をしっかり考えた上で)卒業式に臨まなければいけないとは思っていました。
*マジョリティのグループ(人種や地域)に属する人々が、マイノリティのグループにいる人々の文化を敬意を払うことなく使用すること。例えば、欧米の有名ファッションブランドが、メキシコ先住民地域の民俗服のデザインを勝手に使用する事例や、欧米の著名な歌手が自身のライブパフォーマンスで曲や歌手自身とは無関係の南アジアの地域の民俗服を用いた例などがあります。
参考までに↓
「文化の盗用を防ぐには、他者の文化をリスペクトし、真摯に、同時に喜びを持ってクリエイトすること。」
元々文化の盗用について興味を持っていたけど、メキシコ民族舞踊の衣装を着て踊る者として、これを愛し練習する者として、改めて記事内の言葉を胸に刻もうと思う。https://t.co/ew4CqtbsCT
— まそん (máscara-sonrisa) (@ararkikira) 2019年3月6日
先日も、#メキシコ 行政の人権に関する委員会(CNDH)が、メキシコ先住民の無形文化(遺産)を守る法の制定を求めて勧告を出した、というニュースを目にしたり。
(ファッションブランドによる🇲🇽先住民の刺繍や民俗服のデザインの盗用は、以前より問題視されてた。)https://t.co/EJmxXN6oSu
— まそん (máscara-sonrisa) (@ararkikira) 2019年3月6日
「卒業式でユカタンの民族衣装を着ること」に込めた想い、意味合い
さて、前章でちらっと触れた「(自分なりに考えた、)卒業式にユカタンの民族衣装を着て出席することの理由、そこに込めた想いや意味合い」を紹介します。大きく分けて3つほど。
- 「メキシコ&ユカタン(の文化や踊り)への愛&感謝と、そこでお世話になった方々への感謝、敬意」
今なお、私の興味を惹いてやまないメキシコ及びユカタンの文化(特に、民族舞踊や民俗服)への愛と、再び踊りに夢中にさせてくれて(踊りへの興味を起こさせてくれて)、留学を通して様々な経験を味あわせてくれたこれらの地域に、そして現地でお世話になった人々に感謝と敬意を込めて。
- 「大学5年間、私の進路を幾度となく惑わせ、迷わせたメキシコ(という存在)への意識」
「学部生のうちに一度長期留学に行きたい。できればメキシコがいい。」とか、「メキシコやラテンアメリカのことを勉強したい。」と思っていたものの、私が在学していた学部にはスペイン語の授業もなければ当該地域を専門とする教授もおらず、また交換留学できるような提携校をメキシコに持っていなくて(今はある)、実際何度か違う学部や違う大学への編入学も真面目に検討したこともあった。
ご縁あってメキシコ政府奨学金でメキシコ留学に行けたけど、それまですごく悩んだり散々進む道について迷ったりしたし、それでもやっぱり「メキシコ」という存在にすごく惹かれていたことがあって、今日までの道を歩むことができた。
- 「踊る人/踊りを披露する者としての側面の表示&大学でお世話になった人への感謝」
卒業に至るまでの間、結局大学の中で(メイクや衣装を着用した上で)踊りの演技披露を行なう機会が無く、せっかくなら大学生活最後の行事である卒業式で、普通に過ごしている時や学部で授業に出ている時とは(主に表面的に)全然異なる自分の姿であり、重要な自身の側面の一つである「踊り人」の部分を示そうと思った。
また、たくさんお世話になった方々(特に学部の先生方や友人)に大いにこの姿に驚いてもらったり、ユカタンの文化的要素の一つである民族衣装・テルノを知って楽しんでもらえればと思い、“民族舞踊のメイクをした上で”テルノを着ることに。
何度か、「やはりユカタンにルーツがなく、ただひたすらにユカタンが好きで、この愛を学部生である間に急速に育んできたっていうだけの私なんかが、この地域の民族衣装を着るのってやめた方が良いのかな。着ちゃダメなのかな。私には卒業式でこれを着る資格なんかないのかな。」と思ったりもしました。
でもやっぱり、強い欲望は止められなくて…。(しかも一目惚れっていう最強のエフェクトもかかっちゃっているから、もうどうしようもなかった。)
まあ学部生の5年間を通して、メキシコという存在が私に与えた影響は計りし得ないくらいあって、それは「実際にメキシコ留学で経験したこと無しでは、今の自分は本当に存在していない。」とも言い切れるくらい。
これに加えて、どうしようもないくらいにメキシコ民族舞踊に(だいぶ強め、重症気味な)片想いをこじらせちゃってて、特にユカタンの民族舞踊であるJarana Yucateca(ハラナ・ユカテカ)には、そのショーを初めて目にした時から恋い焦がれてて、ずーっと「ハラナ・ユカテカと結ばれたい。結婚したい。それくらい好き。」って、思っちゃってたんですよね。
そんな自分を狂わせるような、それ無しではもう考えられないような存在を、(しかも学部生の間に密接な関係を築いたものだったから、)学部の卒業式という一つの区切りのイベントで背負うというか、身にまとうというか、一緒に手を繋ぎながら歩きたかったというか、その愛を表したかった、という。
なので、「卒業式でテルノを着た」というのは、自分の大きな大きな欲望と愛をむき出しにした結果とった行動でもあります…。
卒業式後の行動
無事卒業式を終えた後、メキシコでお世話になった多くの友人やホストファミリー、知人と繋がっているFacebook上にて、卒業式でユカタンの民族衣装を着たことの報告及びその行動に込めた想いと意味合いを紹介すべく、写真、動画、文章を投稿しました。
投稿を載せた後は、「卒業おめでとう」の言葉とともに、多くの暖かい返信の言葉(「Eres mexicana(あなたはメキシコ人だよ)」とか、「メキシコの文化の一つ(一部)を、日本に持っていって用いてくれてありがとう。」といったようなもの。)をメキシコの友人や知人からいただきました。
また、当記事の冒頭でも少し触れましたが、ユカタンの文化の中でも、特にユカタン地域の民俗服に対する抑えきれない私の愛を&自分が現段階で持っている全ての知識を共有すべく、
も併せて執筆しました。
日本語で書かれたユカタンについてのWebページって全然少ないですし、何より大好きな大好きなユカタンのこと、ウイピルやテルノのことを色々な人に知ってほしいなぁって思いますしね。
以上、今回は卒業式に民族衣装を着て出席したことに関して、色々と紹介しました。
ああ、相変わらずメキシコとユカタンが恋しい。
余談
卒業式には母も来ていたのですが、生で娘の私の舞台用メイク&衣装姿を見るのは、私が小中学生&高校生の時にバトントワリングを習っていた時以来。(メキシコ民族舞踊を踊っている時の写真や映像は何度か送ったことがあるものの。)
既にすこし触れましたが、この2019年3月の間は入念に卒業式の準備を進めていて(当日の段取りの計画、メイクと髪型のリハーサル、ユカタンの民族舞踊の演目3曲の練習など)、そんな準備を着々と進めていた卒業式当日の2日、3日前にはふと「ああ、学部の先生方や友人にとっては、私の「民族舞踊を踊る人」としての姿が新鮮で驚いたりするのだろうけど、小5~高1まで私のバトンの活動(練習、大会出場、イベント出演等)に付き合ってくれた母さんにとっては懐かしさを感じるものなのかなぁ。」と思って、少し感慨深くなったりしていました。
それで、卒業式の次の日に母に、久々に娘の変身後(舞台用メイクをして衣装を着た後)の姿を目の当たりにした感想について尋ねたところ、「よく一人でここまで(メイク、髪のセット、衣装の購入と準備が)できるようになったなぁ。」という、王道の親目線コメントをもらったことをここに記しておきたいと思います。